「…けど…、二人の言うことは、解らなくもないの。」
彼女は黒ひげ殿の身体を起こすと……。
樽の中央を押して、彼を元通りの位置に…戻してやる。
「七転び八起き。一発逆転。要は気持ちの持ちようで…チャンスはまた巡ってくる。」
短剣が次々と刺され、
とうとう最後の一つだけが……
残された。
「……運命は…誰も決めつけられないものよね。」
くすり、と小さく笑うと……
最後の剣を、突き刺す。
「…………あれ……?」
黒ひげ殿は……
樽の中に入ったまま。
「………何で……?」
「……ふふ、植え付けられた固定観念に囚われているからよ?」
「………?」
母上は樽を180度回転させると。
一つの短剣を…指さす。
「……見えない所で…駆け引きをしていたの。」
その箇所の短剣は……
奥の方まで突き刺されては…いなかった。
私がそれをぐいっと押し付けると。
さっきよりも高く軽やかに……
彼の身体が舞い上がった。
「……タイミングも、チャンスも、作り出せばいい。」
また……、黒ひげ殿は、元へと戻ってくる。
「…何度でも転んで…はい上がればいいの。」
「…………。」
「……諦めた時が、本当の最後。やめることは簡単だし。それに…、悔いがなければ……後悔はしない。」
「…………。」
「さて……、と。肝心な所で寝ちゃうお父さんも微妙だけど……、仕方ないわよねぇ。この人がその運命の人だったんだから。」
ソファーでは、堅物親父が頬杖をついたまま……
寝息をたてていた。
「………後は私が片しておくから…。今日はアナタも疲れたでしょう?早くやすみなさいな。」
「………はい。………『あばよ』。」
「………。『いい夢見ろよ』!」
柳沢慎吾ばりの挨拶で……、
一日の終焉を…迎える。


