恋はいっぽから!









その日、夕食を終えて部屋へと戻ろうとする私を……




「…ちょっと待て。」



珍しく早く帰ってきた親父殿が…引き止めた。




「………?何ですか?」



「ん。これ…。」



親父殿が手渡してきたのは…


一通の封筒。



「……お前に…手紙だ。」



「………。親父殿が私に手紙……?ぶ、不気味だわ。」



「阿呆!違うわっ!差出人の名前もないから誰かは知らないが…数日前の朝ポストに入っていた。」



「お父さんたらまだ渡してなかったの?!全くもう…、その字は男の字だって騒いで…うるさかったんだから。いい年して嫌ねぇ。私は早く渡せって言ったのよ?」




「………。……字…?」



私は封筒をひっくり返して。



その字を…確認する。







『三船一歩 様』



宛名にはそう書かれていて……


ここの住所も、
差出人名も、
消印すらも……




ない。





「……ありがとうございます。」




私はそれを胸に抱き、急いで階段を駆け上がると……



ベッドへとすわって、慎重に…封を開ける。




「………?」



中からは小さな紙の袋が出てきて。



それには…



〇〇神社と記されていた。




「……まさか……。」


紙袋の中には……



見覚えのあるお守り。



「………これ……。」




私が莉奈ちゃんにあげたものと…同じものだ。





「…………?」



お守りの他には…何も入っていない。



途端に……、


『その字は男の字だって騒いで…うるさかったんだから。』


さっきの母上の声が…脳裏に甦る。




「………!」


私は慌てて机の上からあるものを探しだすと…



そこに書かれた字と、封筒の文字とを…見比べる。





「……うそ…?」



『三船』と書くその文字に…


彼独特の癖があった。



『三』は右上がり。

『船』の払いは少し大袈裟に左へそっていて。





「なんで……?」




これは…ニシハルなの?






あの日……、確かにニシハルはあの神社にいた。


でも……彼の隣りには紺野先生がいて……。





「……なんで……?」




なぜ今頃……、



こんなことをするの?