ニシハルの低音ボイスはいつもよりも心地よく響いて……
私はそれでも、睡魔に襲われることはなかった。
彼の姿を目に焼き付けるようにして……
じっ。…っと、
じぃい。……っと――
見つめる。
「……高津くん。」
「ん~?」
「……あのですね、私…この度つくづく思ったんです。」
「……?うん?」
「先生って、詭弁を語るだけじゃないんだなあって。」
「………。」
「…ちゃんと色んなことを見越して、それで…教えてくれているだけなんです。違う、そうじゃないよって。」
「…まあ…、奴らも人間だからな。裏には何かしらの思惑はあるよ。」
「………はい。今まで目を逸らしてきて、なんだか損した気分になりました。」
「……そうか。」
「…それで、ですね……。」
「うん?」
「……思ってしまったのですよ、こう…メラメラと。」
「…………?」
「……私も…ニシハルみたいに、あんな大人に……いいえ、欲を言えばあんな先生になってみたいなぁって。」
「………!……そっか…。お前勉強人に教えるの上手いし、向いてるよ。」
向いてる……?
私が……、本当に?
「…目標はさ~、書いた方がいいらしいぞ?」
「書く?」
「ああ。受験生とかよく紙に書いて貼付けるじゃん?『めざせ〇大』とか『絶対合格』とか。」
「……高津くんもしているの?」
「俺はしてないけどさ。でも……見る度戒めにもなるし、再確認できるし、いいらしいぞ。」
「……そうですか。」
「あと……、継続したいものは他人に言うといいんだって。ダイエットとかは特に。」
「…………。今高津くんには言いましたね。あとは…莉奈ちゃんに、オオサカに、長南殿に……。」
「………。もっと先に言うべき相手がいるんじゃねーの?」
「え…?」
「ニシハル。お前の…目標なんだろ?」
「………!そう…ですよね。先生にはご報告せねば…。」
「ならさー…、いい考えがあるぞ。一石二鳥な。」
「…と、いいますと?」


