「俺なんていつも肩透かしだったよ。ハルの…仁志先生の暴走を止められなかった。」
寺澤先生もまた…彼を見た。
「けど、本気で何かにぶつかったこそ…今がある。逃げたり、知らんぷりしたり、狡いことも沢山覚えたけど……あの日々があったから、どうしたらいいのかちゃんと地に足をつけて…考えることができる。私達大人は…、ましてや教師は、まだ不安定であぶなっかしい彼等を導いてやる必要があります。間違いを教えてやることも大切ですが…見守ることも大事なんじゃないでしょうか。彼等を…信用して。……って、つい悪ノリして意地悪したり話合わせて上手く立ち回ろうとした私が言うことではありませんけどね。」
「…………。」
「私達が小松先生を頼ったのも……、先生なら、教師として、大人として…冷静な判断を下せると思ったからです。社会に出てまだ数年……。そんな大人子供には絶対的な信用をおける人だと知っているから。だから……、あなたが判断することに、私達は…逆らいません。どうか…冷静にご判断下さい。」
「「よろしくお願いします。」」
紺野先生に続いて…
寺澤先生とニシハルが、頭を下げる。
大人が大人に頭を下げた瞬間……、
私達子供は、自分の行動の浅はかさを感じる。
本当の意味での罪悪感が…芽生えてくる。
心が……
痛いわ。
「『大人子供』ね…。上手い逃げ道をつくったもんだわ。」
小松先生は眼鏡を外して……
先生方を交互に見比べた。
「…私…、実は裸眼で両目1.0はあるのよ。」
…………ハイ?
なぜ今視力のハナシ?
「…でも、こうして眼鏡をかけてるとね、物事を直視せずに済んで…楽だったわ。なにより見た目が聡明に見えるでしょう?……色々と…都合が良かったの。…けど…ダメね、いつもレンズは曇るし、位置はズレるし、結局…手間はかかる。そんなんだから…大事なものが見えなくなるのかもしれないわ。自分を繕うことで精一杯で、私は…逃げ道を作っていたのね。」
……………。
「……ふん……ッ!!」
彼女は眼鏡を両手に持ったかと思うと……、
ぐにゃりとそれを…折り曲げた。


