「……私が彼を呼び出したんです。ハッキリ言って恋は受験の妨げになるので…ちゃんとした形で振られればいいと思いました。ですから、彼女に相談を受けて…ちょうど彼の不寝番が終わるのを見計らって誰にも邪魔されず、誰にも見られる心配のないあの時間を…選びました。彼は面倒くさいって嫌がっていたけど…無理矢理頼みこんで。私も…あの場にいたんです。」
「なら、初めからそうだったと言えば良かったでしょう?」
「………。わざわざ傷口をえぐるようなこと…できないでしょう?さき程も言いましたが、彼女は受験生です。確かに、私だって彼女の失恋を願いました。ですが、告白することがどれだけ勇気がいることかも…、失恋の痛手を負うことも…わかっていました。立ち直るには少々時間を要します。最小限の痛みで済むように…したかったんです。それがまさか写真に撮られて、こんな騒ぎになってしまうだなんて……。完全なる私の判断ミスです。三船さんや仁志先生の名誉を…傷つけてしまいました。」
「…………。」
紺野先生……。
私の肩など持たないと言っていたのにー……。
「紺野先生…、私のワガママに付き合っていただき感謝しています。…ごめんなさい。………小松先生。貴方にはこの乙女心はわかりませぬか……?私にはこの道場の門下生をお育てになった貴方がそこまで血の通っていないお方とは…思えません。」
「……それは……。」
「いつも貴方は…私に叱責して下さいます。この時代、真っ正面から叱って下さる方など…いないものです。すぐに体罰だの言われてしまうのですから…。ですから、きっと貴方は愛のあるお方だと感じておりました。なんだかんだ、私を無視せず…こうやって聞く耳を持っていただいているのですもの。厳しいのはきっと、ちゃんとした言葉で…嘘偽りのない事実を知りたかったのですよね。生徒を信じてるから…、門下生(注:教師仲間)を信じているから……。」
「…………。当たり前です。私が信じなくて、どうすると言うの?」
小松先生はみるみるうちに目を真っ赤にさせて……
眼鏡の中へと指を入れる。
私と紺野先生は顔を見合わせて……
ニッと笑った。


