恋はいっぽから!





「お母さんと同じように…、私は彼を裏切ったのに。なのに…どうしてそんな優しい言葉をくれるんだって…思った。後々…、旦那から聞いたわ。ハルはお母さんに会っていたことを。でもそれは…彼女の死後であったこと、彼女も病気を抱えていて……ハルやお父さんに会いにこれなかったことも。ハルは一人でそれを抱えこんでいたの……。きっと、私に心配かけないように。」




「…………。」



涙が…頬を伝うのを感じた。


ニシハルの、その気持ちが…

紺野先生の想いが……



すれ違う二人の心が……


余りにも…優しくて。







「……ハルに背中を押されて、両親の反対を押し切って…産むことにした。お腹が大きくなった頃に大学を休学して、結婚して……。籍を入れるだけだったから余り実感は湧かなかったけど、子供が産まれて…十分に幸せだった。」



「…………。」



「……でも……、それから、ハルとは連絡が取れなくなった。別れても、どこかに彼の存在があったから……だから、大丈夫だったんだって…気づいた。育児に疲れて、半分ノイローゼになって…旦那に当たってしまうことも多くなって。学生同士だったから…両親からの援助と彼がバイトで稼いだお金でなんとかやり過ごしていたけど、またすれ違って……。そんな時に、ハルを思い出していた。彼だったら……なんて、不逞な想いを巡らせて。結局……ダメになった。彼と過ごしたアパートを引き払って実家に戻って、でも…大学を卒業する約束をしていたから、母に子供を預けて、休学していた大学へも復帰したわ。それで……、ハルと再会することになった。まさか、彼がこの学校に戻って来てるなんて知らなくて……、赴任したその日に、辞令を受けに理事長室へと向かう途中で…彼と会ったの。その時のハルの驚いた顔は…忘れられない。私が離婚していることもとっくに知っていたんでしょうけど…、それを噫にもださずに、ごく普通に笑ってくれた。」




「…………。」



「……嬉しかった……。恋人にはなれないけど、同僚として友人として…毎日顔を合わせることもできる。この上ない贅沢だと…思った。なのに…、まさか、よね。」



紺野先生は顔を上げて…、


私の方へと向き直した。