紺野先生の顔が苦痛に……歪んでいく。
きっと彼女は…、傷つく先生の一番近くにいて、痛いくらいに彼の苦しみを……感じていたのだろう。
「……表面では何事もなかったかのように明るく振る舞ってはいたけれど、部活も辞めて、それまで絡むことのなかったような連中とつるむようにもなって……。朝夜関係ない生活を送るようになった。でも私をそれに巻き込むことはなくて……、彼の都合のいい時に、彼の気が済むまで一緒にいたくらい。会う時はいつも二人だったから、独りになって寂しい時に…呼んでたのかもしれない。その時既に彼の苗字は『仁志』になっていた。お母さんの姓だと聞かされたけれど、金銭的な援助を受けてはいても…やっぱり会ってはいなかった。詳しい経緯は…今でも解らない。」
「…………。」
「…彼は…私には特別優しかった。昔は毒を吐きまくっていたのが嘘みたいに……。大切にされていたと思う。」
………。
……ニシハルは…確かにそういう人だわ…。
いくら憎まれ口を叩いたって、その分の優しさを…注いでくれる。
チクリ、と……
胸が痛んだ。
私にだけでは…ない。
ましてや、先生が一番辛い時に側にいた彼女だもの……。
あの、大きな手で、
あの、優しい声で……
彼女にたっぷりと愛情を…注いでいたんだわ。
「………なのに……、不満が募っていった。」
「………!」
「大学に入って、バイトをしたり、サークルに入ったことで…次第に会う時間が減ったわ。お互いの生活があるから仕方なかったけど、もっともっと一緒にいたかったのに、それが叶わないことと、優しすぎることが…かえって不安になった。昔みたいに、弱みを見せることは…なくなっていた。だから…、自分の存在意義がわからなくなってしまったのでしょうね。自信が……なくなった。」
「…………。」
「二人きりで会うよりも、彼の友人や私の友人を交えて遊ぶようになって……、そこで私は…大きな過ちを犯した。」
「……え?」
過ち……?


