恋はいっぽから!






「……そのうち彼は…サッカーに戻って来て、大会に向けて…部活に没頭するようになった。お父さんの病院には行っていたのかもしれないけど…彼の口から、その話を聞くことはなくなっていった。県大会でひたすら勝ち続けて、気づけば決勝の舞台まで辿り着いて…。ハルはエースとしての役割を全うしていった。あんなに生き生きとしたハルの姿は…初めてだった。」



「……事務室の前に飾ってある写真…見ました。その大会、優勝したんですよね。」


「……!そう…。知ってたのね。そのことは…ハルから?」


「…いえ…、先生からは一切聞いたことはないので……。ただ、平賀先生が教えてくれたんです。」



「…『鬼の平賀』が…?」


「……はい。」



「…………そう…。」



「…あ…、でも、詳しい話を聞いたとかではなくて、サラッと、教えて貰った程度で………。苗字が違っていましたが、その理由も知りません。けど…あの写真を撮影した日以来……、先生はサッカーを辞めたって聞きました。全国大会にも出場しなかったって…。でも…、何故ですか?今だって、生徒達とあんなに楽しそうにしてるし、どう見たってサッカーが嫌いになったとは思えないのですが…。」







「………。その日が……お父さんの命日になったから。」




「………え……?」




「…その日の朝に病院で危篤になって……、なのに、ハルには知らされないままだった。お父さんには一時退院の許可が下りていて…、その試合を見に来るはずだったから、信じて疑いもしなかったでしょうね。……病院に駆け付けた時には、もう意識はほとんどなくて…、それでも、死に目に会うことができた。ハルと対面してすぐに…息を引き取ったって。」



「……そんな……。」



あの写真の……

あの、心からの笑顔を見せたその直後に……?






「サッカーは元々お父さんが好きで彼にさせたことだった。だからかな…、続けることが辛かったんだと思うわ。」



「…………。」



「…誰も…彼が辞めることに何も言えなかった。お父さんが入院した辺りから、彼はピリピリしていたし…、余計なことを言えば傷つけてしまう気もして、親しくしていた寺澤先生でさえ…言葉を選んでいた。もちろん、私も…。ハルが一人で頑張っていたことは皆十分に解っていたの。だから…『頑張れ』って言葉は負担になると思った。」