久しぶりにやって来た……保健室。
二度と来たくはないと思っていた彼女のテリトリー内に……恐る恐る、足を踏み入れる。
「…………。」
鼻につく消毒の匂い。
独特な……空間。
今からここで、魔女と対峙して……、
勝算なんてないのに。
なのに……
藁にも縋る思いでついて来てしまったのだから……
何だか笑えてしまう。
自分の馬鹿さ加減に………。
魔女は私を回転する丸椅子に座るように促して、それから……まるで何事もなかったかのように、口を開く。
「…レモンティーとコーヒー、どっちがいい?」
「………。どちらでも。」
「…どっちもインスタントだから味は間違いないわ。なら…私が飲みたい方でいいかしら?」
「…………。」
返事を待たずに、彼女はマグカップへと粉を入れると……
ポットのお湯を注いで、それをスプーンで優雅に…掻き混ぜていた。
「はい、どーぞ。」
マグカップを…手渡される。
「………。ありがとうございます。」
恐ろしいくらいに落ち着き払った彼女の様子に…少々驚いたまま、それを受けとった。
もっと、嫉妬に怒り狂うんじゃないかと思っていた自分が…いかに幼稚であったかを思い知らされる。
彼女のセクシーな唇がマグカップに触れて。
私はその様子を……ぼんやりと見つめていた。
「……。毒なんて入っていないわよ?」
「エ?」
消毒の匂いに混じって…、甘い、レモンティーの香り。
「……まだ状況を把握しきれていないって顔ね。」
「………!」
「…とりあえず、落ち着いて。」
「…………。」
「手。…震えてる。」
魔女にそう言われるまで……、全く気づきもしなかった。
レモンティーの表面が…ゆらゆらと小さく波を打っていた。
「……カウンセラー気取りですか?」
指摘されたのが悔しくて。ついそんな…失礼な台詞を口走る。
「………。スクールカウンセラーも兼ねているから、そう捉えても構わない。でも今回は…私情を挟んでしまってるから、貴方の肩をもつつもりはないの。…期待に添えず悪いわね。」
「……イエ…、その方がかえって話しやすいので。」
「……そうよね。今更…互いに取り繕っても仕方ない。」


