「仁志先生。すみませんが…、これを持っててください。」
『その女』はある時、職員室に呼び出されてやってきたはずなのに…、
着いた早々、何故か俺に、ポケットティッシュを…預けてきた。
「では。オペを始めます。」
俺の椅子に男子生徒を座らせて、そいつの頭を…ガッチリと掴んでいる。
「………メス!」
相手が閉じようとする、その瞳をこじ開けて…。
「…ほら、しっかりして!」
ぽたん……、と2滴。
目薬を垂らす。
「高津くんッ、瞬き!」
「……はいはい。」
「……。ティッシュ!」
「…………。」
「仁志先生、ティッシュ!」
「…………。」
なんだ、この茶番は。
とりあえず、言われるがまま…ティッシュを手渡す。
「……手術は……、成功です。」
ふうーっと息を吐くと。
彼女はようやく自分の奇行に気づいたのか……
ぐるりと辺りを見渡した。
そう……、まさかこの変わり者である生徒、三船 一歩が…後々自分の彼女になろうとはつゆ知らず。
この日俺は珍しく……
学校を早退する。
親父の死から、約1年後に亡くなった母親の…7回忌法要の為。


