「何……これ?」
ようやく発した声に反応して……
叔母が駆け寄ってくる。
「日陽………!」
「何だよ、これ…。」
ドン…
ドン………
足をバタつかせ、
堅く目を閉ざしたまま。
親父は……歯を食いしばっていた。
「……何でまだ…病院にいるんだよ。何でそんな変な物つけてるんだよ。試合…見に来るんじゃなかったのかよ!」
「…日陽、落ち着いて…!昨日まで…容態は安定してたのよ。普通に会話もできてたし、帰宅の準備も進めてた。でも……、今朝、退院の時間になって、急に咳こんで……。この病気にはよくあることらしいの。肺が機能しなくなって………自発的に呼吸することが…できなくなった。」
「………!じゃあ、これは……」
「無理矢理酸素を送っている状態よ。自分の呼吸のタイミングと合わないと……苦しいそうだわ。」
「………だったら、こんなの……」
「外したら……、呼吸ができなくなる。」
「……けど…!」
「日陽。この状態で…この人、テレビ中継を見てたのよ。あなたのサッカーの試合…。閉じかけた目を、何度も何度も開いて。」
「…………。」
「…戦っているつもりなのよ、あなたと一緒に。あなたが点をとった瞬間に……また、目を閉じた。声を…掛けてあげて。まだ頑張れるって…あなたからも教えてあげて?」
戦う………?
一体…何と?
誰も口にすることのない対戦相手が、果して誰であろうなんて…、
考えたくもなかった。
「二岡さん、聞こえますか!!」
「日義!」
看護師が親父の肩を揺すって…
叔母が、肩を叩く。
なのに……、
聞こえないというのか…?
目を……
開くことはない。
親父が、呼吸器に手をやる。
その手を……看護師が制する。
「外しては駄目です!」
苦しいのか……?
意識はあるのか…?
どこかに。
生きたいと思う気持ちが…あるのか?


