「…明日から、抗がん剤の投与を始めるわ。」
彼女が第一に発した事は、まさに……寝耳に水の話だった。
「検査をして…今度は肺に癌が見つかったの。幸い、大したものではないけど…放っておけるものではないから……。」
「……癌…?」
「日義は頑固だから、あなたには絶対言うなって言うのよ?でも…そういう訳にもいかないじゃない。」
「…………。」
「経過さえ良ければ、一時退院の許可も下りてるし、大事に考えなくてもいいわ。」
「でも、俺…」
「明日…、試合なんでしょう?」
「……何で…知ってるの?」
「あの人が知らない訳ないでしょう?試合結果が気になって、おかげで興味のない私まで巻き込んでるんだから。」
「…………。」
「あなたは…何も心配しなくていい。サッカー以外で何かしようなど日義が許さないでしょうしね。」
「…大丈夫…なんだよな。」
「うん。大丈夫。」
「辛くは…ないの?」
「辛くても、日陽に見られるよりマシだと言いそうね。」
「………確かに…。」
……言いそうだ。
「さっきまであの人…何してたと思う?」
「………?」
「……ずっと、窓の外を眺めていたわ。」
「…………。」
窓の……外?
「退屈しのぎに丁度いいって、ぼやいてた。」
俺はこの時まだ……、
親父が見ているものが何だか知らなくて。
突然知らされた事実に、
ただただ……呆然とするばかりだった。


