「……今のうちに…戻らないと。」
先生は私の体を離して、また…時間を確認する。
「引き継ぎしてこないと。」
「…………。ですが…。」
顔色が…悪いわ。
「大丈夫、トイレに行ってたことにするし。」
「いえ。そうではなくて……。」
「大丈夫。お前が心配するよーなことは、何もない。」
「…………。」
「…何もない。」
「…………。そうですか。」
「なあ、三船?」
「はい?」
「これから30分後に…、こっそり正面玄関に来れるか?」
「え?」
「体調が悪くないならだけど……。」
「今のあなたにソレを言われても…逆に同じ台詞を返したいわ。」
「…………。うん、だから……ちょっとリフレッシュしようぜ。」
「…………?」
「ずっと寝てばっかりで…退屈だったろ?」
「…………。」
ああ……、先生はまた私に気を遣っているのね。
そんな顔して……
自分の方が、辛そうな顔しているくせに……。
私は手を伸ばして……、
先生のやわらかい髪を、わしゃわしゃっと撫でる。
「……?!」
呆気にとられる…ニシハル。
「……私が…先生に元気を差し上げます。だから…、仕方ないから付き合ってあげますよ。」
「……ん、そうこなくっちゃ。じゃあ、また30分後に。」
「はい、承知しました。」
それから彼は、物音も立てずに。
部屋の外を確認した後……
そっと静かに、部屋を……去って行った。


