「その一人は…私よ。私は…彼を裏切った。結婚の約束をしていたのに…違う男の所へ行った。」
「…………。」
「なのに…、彼は私を許してくれた。この学校でまた出会って…、以前のように、接してくれているわ。」
「…………。」
「……あの時から…やり直したいと本気で思ってる。あの頃お互いに傷つけ合ってしまったことを…ようやく今笑って話せるようにもなった。私の子供も…懐いているわ。……彼しか…いないの。あの頃、私が彼を信じきれなかった。でも今なら…理解もできる。それだけお互いに大人になった。」
「……………。」
「…三船さんは…彼から家族の話を聞いていたかしら…?」
「……!いえ……。」
それは知りたくても、知り得ないことだった…。
「…そう、つまりは。あなたは…そこまで彼の信頼を得てはいないってことね。」
「………。紺野先生は…知っていたのですか?」
「知ってるわ。過去に彼がどんなに傷ついてきたのか、いかに寂しい思いをしてきたのかも……。」
「……………。」
「…あなたでは支えきれない。でも、私なら彼の悲しみを…軽減してあげられる。彼を理解したくて、心理学も学んだわ。……今できる全てで、彼を…愛していきたいの。」
「………。そう……ですか。」
叶うわけがないと…思った。
私は、あまりにも先生のことを知らなすぎる。
好きという理由ひとつで…
彼の心にとびこんで行こうなど、半ば無謀であるように…感じてしまった。
なのに……。
「……でも……、好きなんです。」
いくらわかっていても、どうしようもないものがある。
「……諦め…られないんです。」
話すそばから、ぽろぽろと涙がこぼれて……
「きっと……、ずっと好きなんです!」
どうしようもなくって、頭から布団を被って……
声を押し殺して……
泣いた。


