「…あと、登山客の方は必ず鈴を付けて歩いています。すなわち、山道を少し外しますと…熊に遭遇することもあります。よって、いいですか…、皆様!2日目の山登りの際には、そこのボスザルの指示に従い…決して道を外すことがないように!」
ビシッと指を挿した先……。
我らがボス猿、仁志日陽……。
(注:新見先生は妊婦の為欠席です)
…が、ニシハルは浮かない表情を浮かべたまま、こちらに向き直す。
「…残念だけど…、三船。登山って言っても、リフト一個分のコースの山を登るだけだ。せいぜい30分。熊には出会えないぞ。」
「………。アラ。勉強不足だったわ。」
ニシハルは再び窓へと視線を移すと……
あとは、到着するまでひと言も…話さなかった。
「………わあ、涼し~い!」
高原駅を出ると、そこは一面に広がる緑の景色……。
吹き抜ける風は、カラっと乾いていて……
何とも涼しい、爽やかな風であった。
「いっぽ。あれは何?なんか水が湧き出ているけど……。」
オオサカが、駅を出てすぐにある、ちょっとした岩場を…指さす。
「…あれは、長生きの水です。飲めば若返りすると言い伝えられているわ。」
女子の皆さんが一斉にそちらへと向かい…、
杓を使ってソレを回し飲んでいた。
「…………。随分張り切ってるじゃない。わざわざ調べたの?」
突然、私の肩を叩いてきたのは……
白衣の魔女。
もとい、山ガールに変身した…紺野先生。
「…学級委員としては、皆さんに危険なく楽しんで貰えるようイロイロ計画立ててきましたので……、当然です。」
「………。ふ~ん、素晴らしいわね。私はてっきり、好きな人に認めて貰いたくて…そんな風に、頑張っているのかと思ってたわ。」
「…………!」
「…健気だなあって。」
にこり、と曇りのない笑顔を見せる紺野先生…。
「………。それも、ありますよ。」
私にはそんな余裕などなくて…、こんなちっぽけな反抗しかできやしない。
「…あ、仁志先生ー!」
小走りでニシハルの背中を追う彼女。
振り返るニシハル。
「…………。」
先生、そんな笑顔を…見せつけないでください。


