学校に向かう途中……、
私は幾度となく足を止めた。
「……ぉお、フキノトウが出ているわ。…春ですねぇ。」
理由は簡単。
亡きトモヨさんに代わって……
沢山の春を、見つけてみたくなったから。
わざわざ畦道を通り、
道を外して………。
春の陽気に、誘われるように。
小さいブルーの花…。
「オオイヌノフグリ。…かわいい♪」
「あ。この花の蜜、昔よく口にしたわ。……ヒメオドリコソウ!」
小さな花弁をつまみとり、ちゅううっと吸ってみる。
「………。まあ、こんなものよね。」
昨日私が『トモヨ』さんに化したことは、何か意味があることのように…感じていた。
偶然なんかじゃない…、と。
私は彼女に会ったことはないけれど…、
あの久則を相手していた方ですもの。
きっと…、優しくて、寛大で、辛抱強いお方だったのでしょう。


