リビングで佇んでしばらくすると…
「……ただいまー…。」
両手にエコバッグを抱えた母上が…帰宅してきた。
「わっ。一歩ったら電気もつけないで何してるの?」
母上が電気のスイッチを押して…
蛍光灯の光の眩しさに、一瞬…目を細める。
「写メを…見てたんです。」
私は携帯を操作しながら…淡々と答える。
「……ほとんど…ないんだわ。」
「え?」
「…何でもありません。」
先生の写真は……
ほとんど、ない。
だけどその分ひとつひとつに……
思い入れがある。
「……写メって言えば…、一歩、貴方暇ならそこのカメラのフィルム、現像に出して来てくれない?」
「……え~、これ、久則のでしょう?いつでも自分で行けるじゃない。」
「明日その写真を見せたい人がいるって言ってたの。」
「で。当の本人は?」
「本日囲碁の会の年度初め飲み会ですって。」
「…………。娯楽にばかり勤しんで……。」
「あはは、でも…趣味に生きるって素敵じゃない?私も老後は…お父さんと一緒にそう在りたいものだわ。」
「……あの親父殿とねぇ…。」
二人きりで、一体どんな会話するのかしら。
「母上……、母上は気持ちが冷めたりすることはなかったのですか?」
「なあに、唐突に。」
「……いや…、あの親父殿なので、きっと苦労も多かったのではないかと。嫌になったり…しませんでしたか?」
「………。したした、しまくりね!家出もしたし、喧嘩も多かったわ。」
「…………。」
「…でも……、やっぱり戻ってしまうのよ。理屈なんかじゃないのね、こればかりは。」
「どこが良いのですか?親父殿の。」
「………。嫌な所の方が挙げたらキリないわね。いい所……?唯一、誰にも勝るのは……誠実な所?」
……アレのどこが……?とツッコミたい所だけれど、きっと二人にしかわからない事があるのね。
「……一歩。あなたもきっとイロイロ悩むこともあるでしょうね。相手も相手だし、ましてやあなたはそういう話をしてくれないからわからないけど…。でもね、恋人に限らず人は人の悪い部分を見つけるのが上手なものよ。」
「…悪い所…?」


