恋はいっぽから!









長南殿が自販機を探しに行く間……、



私はぼうっと夜の街を…眺めていた。




涙の粒が、ネオンの光をより幻想的に揺らめかせ……



忙しく歩く人達の話し声と、


走る車の音が……


少しだけ、心地よく感じた。




私を知る者は…


誰もいない。




思いきり泣いてしまいたい衝動に駆られるけれど……。




突然、誰かにポンっと肩を叩かれて……



はた、と我に返った。






「……どうしたの、溜め息なんてついて。」




振り返るとそこに、見知らぬ顔。




「………。……アナタは?」



スーツを着た殿方……。

この人、誰だったかしら?






「その制服。俺の母校のなんだよね。」



「……!そうなんですか。」



「懐かしいなあ、先生たちみんな元気?」



…気さくな方ね。


ですが、



「……ええ。おそらく元気かと思われます。ニシハルなんて相変わらずですよ。」



ですが、『ニシハル』というキーワードは、ただ今……禁句にございます!

(注:誰も彼のことなど聞いちゃあいません)




「……そうなんだー?…で、どうしたの?泣きそうな顔して。もしかして…、恋の悩み~?」



「……!なぜソレを…!」



「なんとなくだけどね~?もしかして当たり?」




「……ええ。」



「彼氏?」



「…の、ようなものです。」



「ふーん。泣かされるよーなことあったの?」



「いえ…、勝手にヤキモキしているだけです。」



「……上手くいってないんだ?まあ、そういうこともあるよね。」



「……。ええ。」





上手く……



いっていたハズだった。

つい、この前までは…。





「…………。人生…色々……。男も…色々。…島倉千〇子さんに切々と唄い上げていただきたい気分です。」

(※かの名曲です)



殿方はうんうん、と頷いて。

それから……


何やら、首を傾げる。




「……ねえ、知ってる?」


「はい?」


「ここの近くに、開運をもたらす天然石の販売店があるんだよね。」



「………!」


「学生さんは割引あり!見て、俺も今、ブレスレットにして腕につけてるんだけど…」




そう言って殿方は…、スーツの袖を捲りあげた。



「わあ…綺麗ですね。」