行く宛てなどなくて、ずっと歩き続けていたせいで……
ローファーを履いたかかとが、次第に痛くなってきた。
辺りは真っ暗。
街灯に明かりが灯り、私の影と、彼の影とを……
ぼんやりと映し出していた。
「一歩。足…大丈夫?」
その一方の影が…私に手を差し延べて、肩を掴んでは…歩みを止めた。
「……痛いです。」
「靴ずれしてんじゃないの?少し…休も。」
とうとう観念した私は、近くにあったバス停のベンチへと…腰を降ろした。
「……………。」
「………………。」
「「………………。」」
気まずい空気が…二人の間を流れる。
それを象徴するかのように、私達はベンチの端と端。
これじゃあ一緒にいるとて、喧嘩中のカップルみたいだわ。
思いきり…気を遣わせてるはず。
「……結構遠くまで来たな。アンタあれだろ、家族…心配すんじゃないの?」
長南殿が、遠慮がちに小さく…声を漏らした。
「……ええ、けど、あの方は家を出たので以前よりは大丈夫かと。」
「……?『あの方』?」
「ええ。……アラ?長南殿は知らなかったかしら。」
「……?多分。え…、まさか……ニシハルと同棲してるとかじゃないよな。」
「……まさか!そうだったら今していることは無意味に等しいことになります。…そうじゃなくて…、宏輔のことです。」
「『コウスケ』?」
「はい、ちょっと暴走ぎみの…私の兄的存在の方です。」
「へぇ…。」
「多少過保護なんです。ですから、一時期はニシハルはもちろん、貴方や高津くんにまで被害が及ぶやもしれませんでした。」
「あ。そういやアンタに思いきり避けられたことがあったな。」
「ええ。今となっては笑って話せますが、あの時は必死でした。」
「………。そっか。結構傷ついたんだけど、あん時。」
「かたじけない。早くにお伝えできればよかったのですが…。」
「ん。そーだね。話してくれたら、なんとでもしたのに。」
彼はうっすらと笑って。
それから…
少し、私との距離を縮めてきた。


