帰りのHR。
ニシハルが再びクラスに姿を現すその時まで……、
ポケットに忍ばせた携帯が鳴らないかと何度も手探りした。
けれど……
一度も鳴ることなく、
なんら変わらぬ様子で顔を見せた彼に……
私はほんの少し、寂しくなった。
メールを見ていないのか、
それとも……
何か考えあってのことなのか。
こんなことなら、毎日顔を合わせても……
どんどん切なくなるだけ。
これまでとは明らかに違う毎日に……
私は本当に耐えていけるのだろうか。
長南殿が言っていたように…、私がアクションを起こせば…
先生に、面倒だと思われてしまうのでしょうか……。
ならば……どうしたらいいのでしょう。
「正念場ね……。」
「……?三船?何か言った?」
「………!」
こんな…
どうでもいい言葉だけ拾わないで欲しいわ。
「………。『承知しました。』…と、そう言いました。」
「は?」
「私が…自分の意志を持つと、誰か(※ニシハルのこと)が不幸になるのです。」
「……?三船。お前何か…悩みあるの?」
「………!」
ニシハルが……
気づいてくれた?
「ニシハル。あの人、今『家政婦のミ〇』ごっこにハマってるだけだから…余りそこ気にしなくていーから。」
「…………?!」
ちょ…、長南殿?
「あっそー。そういうのはHR終わってからにしてくれない?」
「……業務命令ですか?」
「(イラッ…)…そう。」
「………。承知しました。」
ああ……、
また先生を苛立たせてしまったわ。
やっぱり私の真の訴えに気づける訳なんて…なかったのよ。
このままでは彼のあの優しい笑顔を……忘れてしまいそう。
これまで……
どうやって彼に関わっていたのかしら。
接し方が……
わからない。
あの日の保健室の時のように、拒絶されるのが…怖い。
「……一歩。」
不意に。
長南殿が……私の名前を呼んだ。
「……え?」
「こっちの命令…、今遂行してくんない?」
「……え、ですが…。」
クラスが…ざわつき始める。


