「……み…、見ましたか?」
「……いや…。」
「見ましたよね。」
「……はい。」
「………………。」
何て……ことでしょう。
よりにもよって、真っ黒な下着。
うっかり、勝負をするお相手を…
間違えた…?!
「もう…生きてはいけませぬ……。」
「…は?」
「こんな醜態を晒して…女が廃るわ…。ああ、いっそのこと此処で腹を切ってお詫びしたい……!」
「……お~い、三船?帰って来~い?」
私は胸元を隠したまま。
長南殿へと振り返った。
「…ええ、もちろん冗談です。ですが…この状態で教室には戻れないわ。」
「……。う~ん、確かに。あ、そうだ。」
彼は小さく呟くと……、
ガバッと目の前で。
自身が着ているカーディガンを脱ぎ始めた。
そしてそれを…私の頭からすっぽりと被せる。
「……え?」
あったかいわ…。
それに、長南殿の…香りがする。
「…よし、隠れたっ。教室までそれ着てけばいーよ。体操着持ってきてる?」
「いいえ。今日は体育がないから…。」
「そっか。なら俺の貸すから…取り敢えず急ごう。」
………。
長南殿は…、優しい。
さっき来る時もきっと…、他の人に見えないように盾になってくれたのね。
廊下を歩いて行く先々で、沢山の生徒達が指をさしてはこそこそと何かを話していた。
「ほら、あの二人……。」
時折、そんな囁き声も……。
「………。三船。」
「はい?」
「手、繋ごうか。」
「ええっ?!」
「……偽装カップル、どうせだったらコントばりに…楽しくやろうぜ。」
「…………。」
そっか……、
そういえばクラスの皆さんにはそういうことにしていたんだわ。
先生とのお付き合いをカムフラージュする為に。
先生に……
少しでも妬いてもらうように。
「さっき顔を洗ったから…冷たいやもしれないです。」
「いーよ、俺、あったかいし。」
躊躇なく握ってきた長南殿のその手は……
本当に、ぽかぽかとしていて。
どんよりしていた私の胸に…
まるで、太陽のような温もりを…分けてくれた。


