「三船一歩!」
「……………。」
「……おい。……三船ッ!」
バシッと…
カモメが私の頭にぶつかっていく。
「……ん?『バシッ』?」
ゆっくりと目を開ければ……。
「………あれ。浮輪は?」
ここは……?
どこ?
「バカンス中悪いけど、授業終わったら職員室に来い。」
目の前に。
水着……じゃない、
スーツを着込んだイケメンが……
にこりとも笑わず、私を見ている……!
私は辺りを見渡して。
ようやく視界にとらえた時計で…、時間を確認。
確か最後に見た時間は……?
「……。まだ5分しか泳いでいません。」
「おまえ…。まずそのヨダレを拭け。5秒でも目ェつむればアウトなんだよ。」
そのイケメンが差し出すタオルを奪うと…。
(注:ハンカチのこと。ちなみに一歩はまだ夢見心地です。)
私はゴシゴシと顔を拭いた。
「テメ……。」
「…ありがとうございます。……ハイどうぞ、お返しします。」
しわくちゃになったタオルを、イケメンさんは少しひきつった顔で畳み直すと……
それを、ポケットにしまった。
「ニシハル紳士~!」
「……はあ?!」
浜辺で騒ぎ立てる人々。
「いいなあ~、いっぽ。ねえねえ、どんな匂いした?」
あら?
いつの間にか…。
友人の莉奈ちゃんがいる。
……なる程。
「…………。ようやくわかりました。ここは学校ですね。なのに……、おかしいですね。何故先生のハンカチから煙草の匂いがするのでしょう?敷地内全面禁煙のはずです。」
そう……。
このイケメンは。
れっきとした先生であります。
海の監視員じゃなかったなんて。
妄想もここまでくると馬鹿げてくるわ。