新見先生は、ゆっくりゆっくりと黒板に字を連ねて……
音をたてて、チョークが手放された。
「……と、いうことで…。3年7組の担任になった新見聡子です!去年も3年生の担任を受け持っていたのでまさか2年連続になるとは私も驚きでしたが、メンバーを見てもの凄く楽しみになりました。進級早々クラスの親睦が深まってるみたいで…安心したのが本音です。」
「…………。」
新見先生には授業を受け持って貰ったことがないからわからないけれど……、軽く挨拶を交わしたことはある。
笑顔を絶やすことない、あたたかい雰囲気の先生……。
私は少しだけ…ホッとしていた。
「受験生というナーバスになりやすい時期でもあるので、なんでも気軽に相談してください。ただ…、一番重要な3学期に…私事でクラスから離れなくてはいけなくなるかもしれません。それだけは申し訳なく思います。…ごめんなさい。」
先生は、深々と頭を下げる。
「……この人、今妊娠してんだよ。」
ざわめく生徒達の声に…
長南殿が、ハッキリとそう告げた。
「じゃー担任はどうなるの?」
大切な時期に、担任不在……。
彼等が不安がるのもよくわかる。
「……それなら、安心して下さい。私が産休に入ったら……もう一人の担任が、ちゃんと皆さんをサポートしますから。……むしろ、みんなには朗報かもしれないわね。」
新見先生が言った言葉……。
『もう一人の担任』。
「あれ?それ、俺聞いてないし!」
長南殿が盾突くと……
「当たり前でしょ。言う訳ないじゃない。」
ギロリ。と…鋭い眼光が、長南殿を捕らえる。
「……お…、怒るなよ?」
長南殿は……
タジタジだ。
「………つまりは、このクラスは二人担任になります。訳あって副担の先生は後で来るけど…、ずっと君達の授業を受け持ってきた先生だから安心してくださいね。」


