恋はいっぽから!




気づけば夜の9時。




「すみません、すっかり長居してしまって……。僕はそろそろ……」



「まあ待て、今代行呼ぶから。」




親父殿はそう言って。


電話をしに…席を立った。








「あ~………飲み過ぎた。」





母上はキッチンに。


そして久則は就寝。




リビングには……


私と先生、二人だけ。







「あの二人ザルだから…、日本酒、かなり飲まされてましたよね。大丈夫ですか?」



先生にミネラルウォーターを差し出すと…彼はゴクリとひと口、それを口にした。




「なに?介抱してくれるの?」



周りをキョロキョロと見渡して。


それから……、彼は手招きした。




トロンとした瞳が………母性本能をくすぐる。




思わずぴょんっと抱き着くと……。




「あはは、かわいーかわいー。」



酔っ払っているせいか、陽気に笑って……



髪を撫でてきた。




するすると髪を滑らせてゆくその手つきが……




妙に優しい。






「……先生。」



「……ん~…?」


…聞いても…いいかしら。



「親父殿とはどんな話を?」




「………。気になる~?」



「今…、何やら間がありましたよ?」




「……。気のせいじゃん?」




「……いーえ!」




「……ちゃんと、お前と付き合いたいって話したよ。」




「……それで、親父殿は何て?」




「…………。本当、いい親父さんだな…。」




……今……、


上手くはぐらかされた……?





「……あの……!」




「三船が愛されて育ってきたのがよ~くわかったよ。」




彼は最後にぽんぽんっと頭を叩いて。


ゆっくりと……


体を離した。




「……お子サマには教えない。けど…、お前が心配するようなことはないから。」



先生は……



笑っていた。



これ以上にないくらいに、優しい瞳を向けて……。






でも。




先生、これはいつもの笑顔ではないわ。



今、このタイミングで……そんな顔されたら、




気になって……仕方ないじゃない。