三船家のリビングに……
先生がいる。
「あ。これ……、どうぞ召し上がって下さい。」
先生は手に持っていた紙袋から箱を取り出すと……
母上にそれを手渡した。
「まあまあ、そんなお気遣いいいですのに……。」
…と言いながら、母上はホクホク顔。
なぜなら包装には有名店のシールが施されていたから。
何かしら、この手口…!
主婦ゴコロを鷲掴みする術も心得ているのね。
「先生、珈琲でいいかしら?」
「……すみません、突然押しかけた上に…。どうぞお構いなく。」
「……うふふ、遠慮しないで。先生はお若いのにしっかりなさってるのね。」
「いえ……。」
どうやら母上には好感を持たれているようだけれど……
けれど………!!
「せ、先生……。」
「ん?」
私はキッチンにいる母上に聞こえぬように、こそこそと話し掛ける。
「さっきの、母上が言ってたフラ〇デーの話ですが……」
「……なに?聞こえない。もう少し大きい声で話して。」
「………。ですから、先程の……」
「……?なに?もうちょい近くで。」
…………。仕方ないわね。
私は身を乗り出して…、今度は彼に耳打ちする。
「……さっきの………、……ぎゃっ!」
こともあろうに。
先生、テーブルに置かれた私の手を……ちゃっかり掴んじゃっていますが…?
「……え?何ナニ?」
…このニヤニヤ…!!
絶対わざとだわ…!
この人に緊張という文字はないのかしら。
「……一歩?どうしたの~?」
私の声に反応したのか、母上がひょっこりと顔を出した。
「……何でもないわ。ちょっと私の手に虫が…。」
パチンっ☆
ニシハル、即座に平手打ち!
「……推定死亡時刻、6時半…。埋葬はこちらでしますので…どうぞ母上はそちらをお続けになって。」
母上がいなくなると、私はふぅー…っと大きく息を吐いた。
何かしら、この展開……。
おちおち油断なんてできいわ……!
(色んな意味で……。)


