高津が廊下を歩いている頃……、
ニシハルは、次の授業の準備に取り掛かっていた。
「あと少しで正月休みかあ…。仁志、お前正月は帰省するの?」
「…ああ、正月ねえ…」
隣りの寺澤と時折雑談を挟みながら作業を進めていると…
ガラッと勢いよく……
職員室のドアが開いた。
「お。いたいた、ニシハル。」
やって来たのは……
高津奏哉。
名指しされたニシハルは…、
『俺?』というようなジェスチャーで、自分を指さした。
「ニシハル、数学のノート持ってきたんだけど後で見といてくんない?」
「……は?課題なんて出してた?」
「自主勉だよ、自主勉!答え当たってるかわかんねーからさ。見て欲しいんだよね。…あ、ちなみに4人分ね。夕方にまた取りに来るから。」
「………?ああ、わかった。ここに置いてて。」
机の上にノートを置く高津のその動作を見守りながらも…
まだ、イマイチ状況が掴めていない様子。
「じゃあ…、よろしく。」
彼が意味深に微笑むその表情を見て……
ニシハルはこれは何かあるな、と…うすうすとは察知したようだったが。
去りゆくその背中を横目で見ながら、
やっぱり首を傾げるのであった。
「………。高津が…、自主勉?」
何も知らない寺澤先生は、
「へぇ~…、高津って進学組?熱心だなあ…。」
…すっかり関心した様子。
「………ああ。」
「しかも4人分とかって。あとは誰?」
「多分、太田と三船と……」
……と、そこまで言って。
ニシハルは、急に黙りこんだ。
「……………。」
『あと一人は……?』
そこで、椅子を回転させて…
寺澤先生に、背中を向けると……。
積み重なったノートに書かれた名前を、一つずつ確認し始める。
高津奏哉…、
太田莉奈…、
三船一歩…、
「…………。」
チラッと三船一歩のノートを持ち上げると……。
「…………!」
…『ニシハル』。
彼は一度、上のノートを被せてみた。
「………え…?」
もう一度覗いてみると……。
やはりそこにあったのは…、


