「……じゃあ一歩。僕は仕事に行くから。……いつもの見送りをしてくれないか?」
「…………!!」
宏輔……?
「…何を今更照れる必要がある?……仕方ないなあ……?」
彼は私の腕をぐいっと引き寄せて………
チュウっと音を立て、
おでこに…
キスをおとした。
「……こ、宏輔っ!皆さんが見てるわっ!」
生徒達からは……
冷やかしの声が上がり、
「やあ、どうもどうも。」
宏輔は呑気にそれに応えているけれど。
いかんせん、
リアル彼氏の前でこれは……
マズくないっスか?
「……ヤベ、朝礼始まるわ。……すみません、失礼します。」
先生は、一切私の方を見向きもせずに……
宏輔に軽く頭をさげた後、くるりと踵を返した。
「……先生………?」
まままま…………、マズイ!!
これは……
怒ってらっしゃる?!
やがて先生は……、
「ニシハル~、上まで一緒に行こ♪」
取り巻きのお姉様方に囲まれて……
その背中が、彼女らによって隠されてしまう。
ああ……、
またおなごを侍らせて…
私以外の女性に、優しくするのね……?
「そうだよなぁ…、若くていい男を放っておく生徒はいないよな。」
「…………!!!」
………バチンッ…!!!
「………あ………。」
私はつい……
宏輔の頬を…。
思い切り叩いてしまっていた。
「……こ、宏輔……。…ごめんなさい。」
私、一体………
何を………?
途端に。
目頭が、じわりと熱くなって……。
「……い、一歩?」
宏輔が、オロオロし始める。
「………アレ……?」
私は、流れ出す熱い何かを……
腕で必死に拭う。
「悪かったよ、今のは全面的に……俺が悪いッ!」
「いえ…、宏輔は何も悪くなんてないわ。ただ、私が……」
私が………
勝手に寂しいだけで、
悔しいだけで、
不甲斐ない自分に……
呆れているだけ。


