「…………。」
首に巻かれたマフラー。
三船はそれをさも大切そうに左手で握りしめながら…
ゆっくりと、前を歩いて行った。
「このまま……、いっぽんちに突入しちゃう?宏輔さんに会えないかしら。」
「……宏輔…?ああ…。」
俺の中では既に…。
「宏輔」という存在は……
そんなに大きいものではなくなっていた。
「…俺はやめとく。…三船とはさっきの一件のこともあるし。」
「………あんたがああいうスキンシップをとるとはねぇ…。意外だったわ。」
「……まあなー……。」
あの後…、アイツは俺とは目を合わせなかった。
本人にしちゃあ普通に接しているつもりかもしれないが……。
お蔭様で俺も……
ニシハルや泰人の気持ちがよ~く解る。
いや……、
ニシハルは……別か。
「……あ……。雪……!」
「………!」
気が付けば。
小さな雪の粒が…、
ふわりふわふわ…
まるでダンスを躍っているかのように…空を舞っていた。
「寒~いッ、いいなあ、いっぽ。私もマフラー買おうかな。」
「お~、買え買え。」
「…………。」
「……?なに?」
「アンタのそのマフラー!『貸してやる』とか気の利いたことは言えないかなあ…?」
「…………。貸せるなら、とっくに貸してたよ。……三船に。」
「あっそう。先越されて…残念ね。」
「…まあな。」
いくら後を追っても……
三船は、こっちへ振り返りやしない。
これがニシハルだったら……?
「……え~いっ!……貸してやる!今すぐ首に巻きやがれ!」
俺はマフラーをとると……
強引に、莉奈の手元に押し付けた。
「……気が利くじゃん。ありがと。」
気が利くのは…どっちだよ。
莉奈は俺のマフラーをすぐさま巻き付けて。
「げ。高津の温もりが…!」
…なんて嫌そうに眉を潜めるけれど……。
その目は、しっかりと笑っていた。
俺の行き場のない思いを…
こうやって、さり気なく受け止めるのもまた……
こいつの役目だ。


