朝から執拗に纏わり付く……
久則の視線。
「…一歩、何か食べないと……。」
食欲のない私を心配する母……。
「……母上。心配、無用よ。」
今はとにかく。
そう……、
自分でも何だかわからない、このモヤモヤとした感情を……
払拭させたかった。
「…一歩。」
親父殿の小言を聞かされるその前に……、
「…では。行って参ります!」
くるりと踵を返して……
玄関へと向かう。
そのドアを開けると……。
ビュウっとひと吹き北風が……
私の前髪を持ち上げた。
「…………。」
………。
玄関へと逆戻り。
「今日は氷点下。…コレが必要なのではないか?」
待ってましたと言わんばかりに、久則が……
私にマフラーを差し出す。
「……………。」
していきたいのは山々だった。
先生の温もりさえあれば……
例え一人旅でも寂しくないって、そう……
言い聞かせていたから。
それでもすぐに受け取れないのは……
これをつける度に、きっと後ろめたさを感じてしまうから。
莉奈ちゃんや高津くんに顔向けできないんじゃないかって……
そう、どこかで……
思ってしまっているから。
「……いらんのか?」
「…………!」
「欲しいのなら、力ずくで奪ったっていいのだぞ。」
「…………。」
「……なら。町に行って売ってくるが?」
「…それはダメです。」
「昨日お前が言った言葉だ。」
「……そうだけど……」
「武士に二言はあるまい?」
「私は武士ではありません。」
「なら……、鶴か?」
「…いくら鳥類が好きだとて、どうウォッチングすれば私がBird(鳥)に見えるというの?」


