「…授業始まんぞ。」
振り返るとそこに……
ニシハルの姿。
「……わかってます。ですが……」
「………。挙動不審。…あ、いつもか。…てか誰か探してんの?」
「………!はい。待ち人来ず…です。」
「……ふぅ~ん……?」
ニシハルは急に真顔になって。
穴が空くんじゃないかというくらい、
じ~っと、
じぃい~っと、
私を見つめた。
「………?あの……?」
そんな熱い眼差しで見つめられたら……、
その熱で、私はとろけてしまうわ!
「……待ち人ね。」
「………?」
「らしくないじゃん。自分から行かないなんて。」
「………?」
「あの時は…、何だったの?」
「…………。」
『あの時』…?
「長南泰人。…似合ってんじゃん、お前ら。」
「………!なぜ先生が待ち人の名を……。」
「てか、あいつもお前んとこ見てたよ。…グランドから。…いつも。」
「……え?」
『あいつも』?
「…気づかなきゃいーのに俺も気づいたもんだ。………で、ついでに思い違いをしてたのかもな。」
「……せ、先生?」
思い違いって…?
「…来ないよ、長南なら。」
「………?!」
「……ホラ。」
ニシハルは私の目の前に……
何かを差し出した。
……数学の……教科書。
「長南がお前に返してって。」
「……そうでしたか。それならそうと早く……」
受け取ろうと伸ばした手が…、行き場を無くして宙を切った。
なぜなら。
彼がひょいっとそれをそらしたから。
「てか、これって宣戦布告?」
「………はい?」
「何でわざわざ俺に渡す必要あったんだか。」
「………?その方が効率良いからでは?わざわざ足を運ばなくて済むし。」
「……………。」
無言になる時の先生は…
何を考えているのかが、さっぱりわからない。
ただ、いつもみたいにイラつくだとか、そういった感情は持ち合わせてはいないようで……。
「……はあ~……。」
気怠そうに、息を長くはいた。
「…お前と話してると…、何か疲れるわ。」


