「……理由は?」
「いっぽが知られたくないことかもしれないので…、言いません。」
「…何だよ、そこまで言っておいて…。気になるじゃん。」
「………。気になりますか?」
「……?すりゃあウチの生徒だし。」
「……気にかけてくれる先生がいるなら……安心です。」
「………。」
「…やっぱ仁志先生最高!」
「……?!や。別に俺は何も……。」
「………それでいいんですよ。」
「………?」
「…みんなとかわりなく接して…、それでいて…、ちゃんと彼女自身を見てくれる。そんな普通のことが…、いっぽにとっては嬉しいことなんです。先生も見たでしょ?いっぽの…さっきの顔!あ~んなに顔真っ赤にしてさ。久々に見たなぁ…。きっと、よっぽど嬉しかったんです。」
「…………。」
「…先生。先生くらいは………ちゃんとこのまま見てやってくださいね。……いっぽのこと。」
彼女は彼に深々とお辞儀して……
「…では、拙者もこれにて!」
三船一歩の口調を真似て、
職員室を後にした。
「………『久々』ね…、俺なんて初めて見たっつーの。」
ニシハルの脳裏に……
さっきの、三船一歩の顔が…蘇る。
それは。
顔を真っ赤にしてはにかむ……、
彼に向けられた、初めての笑顔。
ニシハルは髪をわしゃわしゃとさすって……。
それから。
さっき三船一歩が置いて行ったそのノートを……
手にとった。
表紙には、『数Ⅱ』と、筆ペンで大きく書かれている。
そんな小さなことも。
「あいつらしー…。」
彼にとっては、新たな発見。
早速課題に目を通すと……
物凄く筆圧の濃い字で、驚く程の達筆。
これまで……
自分がいかに意識せずに見ていたのかが…わかる。


