恋はいっぽから!







一瞬の沈黙を切り裂いたのは……。






「…遅くなって、申し訳ありませんでした。」




三船一歩の、ハリのない謝罪の声………。





頭を下げたまま、ニシハルの机の上に……



ノートを置いた。






「……三船。」





ニシハルが……、




不意に、彼女の腕を掴む。






なぜならば……





白くて、細いその指が…






僅かに震えているように見えたから……。





「……離してください。」




「……けど…」


「……離して!」




バッと彼の手を払って、


そこでようやく目を合わせた二人だったが……。





「……三船……?」




彼は……


目を見開く。








「か……、かたじけない!このご恩は…、いつか、必ず!」




「……は?」



「これまでの数々の御無礼、どうかお許しを!…では。拙者はこれにて……、失礼いたす!」




「え、あ。おい……。(…何で武士?)」







残された二人は、ぽかーんとその背中を見送る。






「……何あれ。あいつ、いつもあーなの?」



「はい。…結構…てか、かなり面白いでしょ?」



「………。いや、わかってはいたつもりだけど…。(…予想以上に)面白すぎ。」




ニシハルの言葉に…、



太田莉奈は、パアッと目を輝かせる。




「…でしょ?!…てか、さすが仁志先生。ちゃんと生徒のこと見てくれてるんですね!」



「………!」



「………先生なら。わかってくれると思ってました。」




「……え?」




「いっぽはちょっと変わってるかもしれないけど…、ちゃんとそれには理由があるんです。」




「……?」




彼の顔つきが…変わる。



「アレでも…、苦労人だったんですよ。今だからこそ、面白可笑しく見えるだけで。」



「……どういうこと?ソレ。」



「……。あれが精一杯なんですよ。彼女の。」



「…………。」



「……自己防衛。」



「……なんで。」




「……。まあ、色々ね。それに、いっぽは…、特に『先生』に対して不信感をもってます。」