不意に……
ニシハルの妖艶な口元が……
僅かに綻びる。
「……今度はこの境界線…、俺が飛び越える番だ。」
彼はそう言って…。
教室の中へと…一歩踏み出す。
「…それに。…悪いけど、奪われる前に……奪うけどな。」
次第に私達の距離は近づいていき……、
ひとつ机を挟んで…向かい合う。
「………邪魔だな。」
ニシハルはそれを退かして。
私の腰をぐっと引き寄せると……
そのまま、彼の胸にうずめるようにして…抱きしめる。
「………。先生……?」
「……待つのはもうやめた。どう足掻こうと、忘れたくたって。……忘れさせてくんないし。」
ぎゅううっと身体を……締め付けられる。
「……痛いです。」
「…それだけ…、強烈すぎんだよ、お前は。」
「…………。」
彼は一度身体を離して…。
吐息が触れ合うくらいの近い距離で…
確認するかのように、私の顔を……覗き込む。
「そんなに……見ないで下さい。」
「は?なんで。」
おでことおでこがくっついて……
彼の髪の毛が、私を…くすぐる。
「……ち、地球人との交信にはなれておりませんので……。」
「今更?あんなことやこんなことまでした仲なのに?」
彼の大きな手が、私の髪を梳いて…、耳へと掛ける。
「それでは…語弊があります。」
その手が、私の頬に触れた時……、
不意にポロっと…涙が溢れ出した。
「……何で泣いてんの?」
「地球人にはわかりませんよ。」
「……はあ?……。じゃー仕方ない。交信しとくか。」
ニシハルの唇が……、そっと、私の唇に触れる。
「……しょっぱ…。」
二人顔を見合わせて、ふと…微笑み合う。
私は…そんな彼の顔を、じっと…見つめた。
出会った頃と変わらない…、涼しげな瞳。スッと通った鼻筋。セクシーな口元に…それを象徴する小さなほくろ。
でも、あの頃と違うのは……
彼の瞳に……映るもの。
今、彼の瞳には…私しか、映っていない。
「目…、閉じて。キスしづらいじゃん。」
いーっと口を開いて…それを拒否する。


