教室を出て……、
ペタペタと廊下を歩く。
それに比例するかのように……、どんどん増していく…動悸。
足の裏の冷たさが…、指の先まで伝わって。
次第にその手は…小さく震えていた。
緊張、
不安、
恐怖。
……そのどれにも当て嵌まらないような…
不思議な感覚だった。
ぴたり、と足を止めたのは……
私達の始まりの場所。
職員室ー……。
この壁の一枚向こう側に……。
誰かが……いる。
そう確信したのは、そこから煌々とした光が溢れ出ているからで……。
決して運命を信じるとか、そういった自信は既に…持ち合わせてなどいなかった。
扉は…開かれたまま。
すぐ傍の壁に背をついて。
慎重に、そのタイミングを……
窺う。
「じゃあお先に失礼しまーす!」
そんな声と共に、職員室から出てくる…人影。
壁に張り付いた私のすぐそばを、その声の主が通り過ぎた後……
2、3歩もどって、くるりとこちらへと…振り返る。
「……三船……?お前、何し…」
「しーッ!!」
私は、慌ててその人……、
寺澤先生の口を塞いだ。
彼がコクコクと頷くのを確認すると…
その手を、解放する。
「どうしたんだ?」
彼は、穏やかな声で…再び問いた。
「……ええ。ちと、夜這いに…☆」
「ええっ…。」
彼は顔を真っ赤にして…目を大きく見開いた。
やっぱりこの方は…素直な方なんですね。
……かわいいわ。
「……冗談です。…あの…」
「………。もしかして…?ハルに用…?」
「…………!!」
え……、エスパー?!
「薄々わかってはいたんだけどさ~…、まさか相手が三船だとは思ってなくて……」
「………?!」
な……なな、なんで寺澤先生にバレて……?!
「………ハルの…好きな人。」
「…………。え。」
「おかしいとは思ったんだよなー、あいつってそういうことは割と堂々としてるのに、今回に限っては口を割らないし。おまけに生徒から貰ったチョコ食べるのなんて…見たことなかったし。きわめつけはあの写真だよなー。幸せそーな顔しやがって。」
「…………。」


