自分の教え子に、こうもたやすく心情を読まれてしまうなんて。
今までの俺では…到底考えられないことだった。
けれど、彼女に関しては…別なのか。
あいつのことになると、自分でも驚くくらいに…余裕がなくなる。
いつもギリギリの所で、理性をきかせてきたけれど……、
その、自信のなさを露呈してしまっているのだから…諦める他ない。
「……そうだよ。悪いか?」
「…………!」
「多分…、俺は怖いんだろうな。」
「…………。」
「……最後の、賭け…だったんだ。」
「……賭け……?」
「ああ。どうやら…惨敗みたいだけどな。」
「…………。」
長南がいる、目の前で……
俺はその、ニシハルノートのページを…めくっていく。
「………あいつが気づくかどうか……、運試しっつーの?まあ…、気づいたとしても、同じ結果だろうと覚悟してた分…怖くもなる。それはつまり…決定打を突き付けられるワケだからな。」
「………。……あいつは多分…、気づいてないよ。」
「……うん、多分そーだろうと思ってた。つか、何でお前がそんなこと……」
ノートから、ちらりと視線を移すと。
奴は俯いたまま…、徐に口を開いた。
「……馬鹿じゃねーの。アンタも、一歩も…。」
「……!」
「周りくどいことしてないで、なんで言ってやんねーんだよ。」
「…………。」
「簡単なことだろ?正面から向き合う大切さは、アンタが散々俺ら生徒に教えてきたことじゃん。」
「…ああ。」
「俺だって、気づきたくなかったよ。けど、あいつは…違うだろ?勘の悪さは…ハンパねぇ。」
「…解ってる。」
「なら……!」
「長南。これがさ…、大人ってヤツなんだよ。」
「……ハ…?」
「人の目を気にして、体裁を気にして、中途半端にしか…ものを言えない。失敗したら、取り返しがつかないかもしれない。だから、自分のできる範疇でしか…行動に移せない。」
「………。」
「……怖いから。」
「………。……ただの…逃げじゃん。」
「……そうだな。…違いない。」


