恋はいっぽから!








「……何してんの?」





背中に響いた…低く小さな声に。




俺は……ゆっくりと、視線を移動させる。






「…そこで…何してんだの、ニシハル。」




「……長南……?」





声の主は……



長南泰人。





さっき、彼女と共にここを出ていったはずの……生徒。



「……別に?…お前こそどーした。てか、あんだけ言ったのに忘れ物したとか言うなよ?カンドー薄れんじゃん。」




適当に、最も自分らしい返しをするけれど……、




「……ごまかしてんじゃねーよ。」




奴にはどうやら通用しないらしい。



まあ、それもそうだろう。



俺が今いるこの場所は、こいつの好きな女でもある…三船一歩の席であったのだから。




「……忘れ物ないか点検してたんだよ。あいつ、そういうのしでかしそーじゃん?」





近づいてくる長南を避けるようにして、俺は教卓へと…向かった。




一方の奴は、腑に落ちない顔つきで……じっとこちらを見ている。




「………じゃあ、俺ももー行くから。お前も早く行けよ?幹事なんだろ。」



長南にそう断って……、


荷物を…まとめる。



出席簿を取ろうと、教卓の中へと手を伸ばした瞬間に……。





「……………。」




その、動きを止めた。




出席簿の下に……もうひとつ。


何かが……置いてある。






「何かが」などと思う方がおかしいのか…、


どこかであって欲しいと思っていたのか、本当は…その正体などわかりきっていて。


出席簿の下に重ねたまま…それらを、手に取る。





「…じゃあな、長南。またいつでも…顔出しに来いよ。」




奴にそう告げて、教室を去ろうとした瞬間……、






「……何で…見てやねーんだよ。」



長南が…


ぽつりと呟いた。






「…………!」




「……見ろよ、今すぐ。」



「は?……何を?」



「アンタが持ってる…そのノートだよ。」



「…………。」



「俺がいるから…遠慮してんの?」



「……………。」



「それとも、アンタ本当は……。見るのが怖いとか?」