いつか味わったことのある……感覚。
母がいなくなった時だったか。
父が…息絶えた時だったか。
それは……わからないけれど、
彼女の後ろ姿が、廊下の向こう側に消えて見えなくなった瞬間に……。それは押し寄せてきた。
ひとつ、息を吐いて。
再びー…手を伸ばす。
狭い空間を、空回りする…指先。
「………。」
ここに置いたはずの、あのノートは……
………ない。
彼女は…持ち帰ったのか?
その指先を、
今度はそのまま……
机の中の天井部分へと…移動させる。
すると今度は……
かちり、と、小さく音を立てて。
指先に…何かが触れた。
「………………。」
俺はその小さな物体を…そこから剥がして。
掌の中へと……握り締める。


