さっきまで賑わっていた教室。
今は……人、一人として……誰もいない。
外から微かに聞こえてくる生徒達の声に。
俺はそっと……耳を澄ます。
「…………。」
入口のドアにもたれ掛かかって、そのがらんとした教室を…見渡した。
妙に、殺風景だと…思う。
いつもの放課後と何ら変わらないというのに。
なのに今は……
残された机に、落書きだらけの黒板さえも。
モノトーンに…彩られる。
「……………。」
ゆっくりと…
一歩一歩、歩みを進めて。
ある席の前で…足を止めた。
その机の中へと、手を伸ばそうとするけれど…。
ふと、躊躇する。
「……………。」
俺は一体何にそんなに怯えているというのか……。
答えを知らないはずはないのに、認めることもできない。
くだらないプライドは…最後まで崩すことはできず、
君がいなくなった今でも……
それは、変わらぬまま。
『…必ず……、会いに来ますから。』
そう最後に言い残した君の顔つきは、すっかり大人びた一人前の女性となっていて……。
背を向けて、歩き去その…後ろ姿さえ、頼もしく……見えていた。
人は、自分の道を歩もうとする時……、
何故あんなに輝いて見えるのだろう。
俺だけがまるで足止めくらったかのように……
置いてきぼり。
胸にポッカリと穴があいたかような空虚感が…、そこにはあった。


