先生が黒板にチョークを滑らせる…軽快な音。
夢へと誘う……低音ボイス。
悔しいくらいに妖艶で、生徒達を魅了する………あの笑顔。
私を撫でる…大きな手。
長く、しなやかな指。
職員室で、貴方がくれた…お菓子の味。
貴方が唇に落とした…
優しい温もり。それからー…、
激しい……熱。
「…………。」
全てはまだ…
私の中で、生きている。
貴方と離れれば、そのうち…忘れることができるのでしょうか?
それとも、何度も何度も呼び覚まし……
溢れ出す切なさと愛しさに、
つい足を止めて。
後ろを……
振り向きたくなってしまうのでしょうか?
「……いっぽ?どないした、ボーっとして。」
「……!」
オオサカの声に…、ハッと我に返る。
「……何でも…ないわ。さあ、行きましょうか!」
足元を…見る。
今、踏み出す一歩が…
私がこの先…歩む道。
校門を抜ければそこに、まだ見ぬ未来への道が……
幾多にも広がっている。
『前を見よ』。
ニシハルが書いた言葉が…脳裏に浮かぶ。
やわらかい風がー……
私達の間を吹き抜ける。
貴方への想い、その分だけ伸ばした髪の毛が…ふわりと宙に舞う。
「……ありがとう。……さよなら……。」
うっすらと目に浮かぶ涙を拭って。
深々と……頭を下げる。
春風よ………、
どうかこの想いを、優しく包んで。
あの人に……届けて欲しい。
伝えきれなかった沢山の感謝の気持ちを……。
大好きだった、あの人に………。
いつか……、
いつかきっと、また、
会いましょうね………、
先生……。


