「いっぽ~、紺野先生何やて?」
「………。……何とか指南ってヤツかしら。」
「………?何やて?」
「いえ。何でもありません。…………あれ…?長南殿は?」
「…ん?何かお局サマが面倒いからって…途中で上手いこと抜けてたけど……。そういや姿見ないわ。先行ったんかいな?薄情なやっちゃ。」
「……電話でもしましょうか?」
「ええやろ、どっかに居るかもわからんけど、あの人幹事やし場所知ってるから…放っとこ。何ならメールでもしといてさ。」
「…………。」
私達は、別れを惜しむその人ごみの中を……
キョロキョロと…見渡す。
けれど……、
やはり、彼の姿は…なかった。
「仕方ないですね。そのように致しましょう。」
長南殿にメールを打って、送信ボタンを押すと……
私は、最後にもう一度……、
校舎を眺めた。
「…………。」
私の青春は全て……ここにあった。
寝てばかりいた…、数学の授業。
お笑いのステージになっていた…教壇。
こっそり彼を見つめていた、あの…窓際。
………沢山の仲間に出会い、笑いに溢れていた……教室。
「……………。」
頭の中で駆け巡る……
思い出の場所。
何度も呼び出しをくらい、説教をばかり受けた…職員室。
DJいっぽにジャックされた…放送室。
嫉妬が渦巻く…保健室。
あの人と、秘密の恋をした…進路指導室。
「………懐かしいわ。」
目を閉じるとすぐそこに……
甦ってくる記憶のカケラたち………。
ふと……、目を開けると。
やがてそれらは……消えてなくなってゆく。
だけど、記憶の断片は……。
私の心の中に眠る五感を…刺激する。
消えるどころか、その感覚は……、驚くくらいに鮮明に。
押し寄せて……くるのだ。


