「だから…、私が彼に気がある地点で貴方にはそう見えちゃった訳。私もそう見えるように仕向けていたから…尚更ね。」
「…………。」
「………。貴方には…わからないでしょうね。ハルがどんなに我慢してたかなんて。どんな顔して貴方を見てたと思う?好きなのに、手を出せない。奪うこともできない。顔にだって…出せない。大人だし、貴方達の教師でもあるから……。」
「…………。」
「…その関係も…、おしまい。もう誰に気を遣うこともしなくていい。一年間我慢してきたのに、待ってたのに……、どうして彼に飛び込んでやらないの?ハルのことだから、何か必ず仕掛けてたハズよ。貴方が、自ら彼を選び……自分の元に来るように。……本当に……、何も話してないの?ちゃんと、思い出してよ!」
「………………。」
何を…話したか?
いつかお礼参りに来ると…約束したわ。
それから、貴方みたいなお色気女子になって、いずれはお局先生のように図太く生きると…宣言した。
「……?あれ………?」
それらは全て……
私が言ったことだわ。
そうじゃなくて……、彼が言った言葉は……?
もし彼が、本当に何かを仕掛けているのだとすれば……。
彼の掛けてくれた言葉に、何かが……。
「………あ……。」
ふと…彼が私に向けた、最後の言葉を……思い出す。
『……忘れ物はないか?』
今にして思えば。
なぜこんな別れの時に、そのようなどうでもいいことを…聞いたの?
『だから……、忘れ物。』
わざわざ念を…押していた……?
「…………。」
いいえ…、それは…そう、ニシハルノートのことがあるからよ。
ちゃんと私が見たのか…
ちゃんと持ち帰ったか…
確認の意だったのよ。
でも、もし……違っていたら…?
私は一体…何を忘れたというの?
「…………。何も…ありませんでした。」
「……え……。」
「…でも…、いいんです、紺野先生。例え彼がそのように思っていてくれていたとしても…、飛び込むわけには…いかないのです。」
「…なぜ……?」
「私が…子供だから。」
「そんなの…彼は承知でしょう?」


