拍手をすることも忘れ、
ニシハルがゆっくりとバイオリンを下ろすその時まで……
誰も……口を開くことはなかった。
一方の彼は、大きな緊張から放たれたのか……
穏やかな表情を…浮かべている。
「…意外だったろ?新見先生がこんなことしたきゃ…、俺も忘れてたかもな。昔…、母の勧めで、バイオリン習わされてたんだ。結局…、サッカーを理由に辞めてしまった。何より、好きになれなかったからな。でも……ちゃんと覚えてるもんだな。新見先生の姿を見ていたら…当時すぐに逃げ出した自分が情けなくなったよ。無性に懐かしくなってさ、知人に借りて…練習してみた。俺にしては…頑張ったと思う。こんな俺でもやりゃあできんじゃん?くだらないかもわかんないけど、少しでも……お前らに伝わればいい。……俺達担任がお前達に伝えたいこと全てを…コレにぶつけた。」
「……………。」
「……以上。………卒業…、おめでとう。HRはこれで……終わりだ。……あ、最後に忘れ物ないかちゃんと確認しろよ?感動の別れのあとに、また顔を合わせるほどマヌケなものはないからな~。」
ニシハルはいつもの淡々とした口調で…。
まるで明日からもまた会えるんじゃないかって錯覚を起こすくらいに、普通過ぎて……
逆に感極まっている私達には、どう突っ込んだらいいのかが……
わからない。


