高校２年、秋……。
大学進学を目指す私にとっては最も大事な時期とも言えるのだけれど……。
困ったことに、ニシハルが受け持つ数学の成績だけが……
現在、伸び悩んでいる。
確かに小学校の算数だって…嫌いだった。
けれど今は何よりも……
彼が苦手であること、
それと……
あの、声。
夢へといざなう、ルックスとは裏腹な優しい声。
それが……
原因であると言っても過言ではない。
ニシハルは……
私達が入学した年に、この学校に新任教師としてやってきた。
ただでさえ。「先生」という存在を敬遠している私にとっては……
最大の、脅威だった。
生徒達との距離を一気に詰めて、ニシハルの側にはいつも誰かがいるような、ワイワイとした輪の中の中心にいるような……
目立つ存在。
誰にでも分け隔てなく接しているから……
当然の如く、私にも構ってくる。
でも……
ニシハルも、私のことは苦手。
一定の距離を保っている。
先生と生徒じゃなかったら……
きっと、お互い一生関わり合うことはないであろう。
だから。
わざわざ会いに行くなんて、
無意味に等しいくらいの……
行為だ。
「本当…、勘弁して欲しいわ。」
