氷の蝶

香宮さんはそんな俺の横をスッと通り過ぎて行く。

香宮さんが昇降口に無事に入っていくのを確認して、ガクリとそこに膝をつく。

そこに、ワッと男子が集まる。


「剣吾ーー!お前って奴はっ!…勇者だ!」


俺の友達が、泣きながら背中を叩く。


「お前よく勇気を振り絞ったなっ!」


違う学年からも声をかけられる。


「おっ、俺は意気地なしですっ…!うっううぅぅぅ…」


「泣くなっ剣吾っ!こうなったことがあるのは、お前だけじゃねぇ!」


慰める友達の声もよく聞こえない。

男子の輪は、通り過ぎる女子たちから、憐れみや『お前なんかが、香宮さんに告白できるわけないじゃん』という蔑みの視線とその他様々な視線が向けられてた。