単純な恋する男たちに冷めた瞳を向けてから、逃げるように校舎の中に。
「あっ、待ってよ~! キトリーンッ」
「キトリンとか、やめてよ。吐き気するから」
私は素っ気なく答えながら、靴を履きかえる。
そして顔を上げて……止まった。
「猫宮キト。お前、昨日サボっただろ」
黒岩……何だ、コイツ。朝っぱらから“裏”を思いっきり出しちゃってんじゃん。
「……でも、ミナミを代わりに生贄にしたでしょう」
「……生贄?」
地を這うような低い声に、私は素知らぬふりを決め込む。
……つもりだったのに。
黒岩は私の想像とは全く違った反応を見せた。