ミナミは睨んでいるらしいけど、ウサギの耳もあるし…しかも涙目だし。迫力が全くない。


「うぅ~~……じゃっ、じゃあ! キトは見たことあるの? もう一人の黒岩くん!」


「……無い。けど、見たいとも思わない」


私の答えに、ミナミは心の底から驚いたようで。


目を丸くして「信じられない」と言うように私を見る。


そのミナミに冷めた瞳を向けて、ため息交じりに言う。


「…………黒岩のもう一人……通称“裏”を見た人は、黒岩に怯えて学校生活を送ってるよ」


「ひ、ひぇ~……それは、恐い」


感心したような悲鳴のような声を上げつつ、ミナミは黒岩が出て行ったドアを見つめた。


そう……黒岩は獣王並みに気を付けなければいけない存在。


触らぬ神に崇りなし。


黒岩に下手に近づかないで、のんびり過ごしていればいい。


「…見たいなら、ミナミだけで見てね」


「い、いい……」


ミナミは顔を青くして、フルフルと首を横に振った。