「猫宮。先生がこれを渡せって」
そう言って何かの紙を渡してきたのは、黒岩だった。
黒岩は、二重人格が疑われる人物。
まあ、私的にはどうでもいい。
丁寧に折りたたんであるその紙を受け取って、ゆっくりと開いた。
猿楽先生が……私に。
嫌な予感がしながら、私はその紙を読む。
『黒宮キト、木の上にある俺のストラップをとってくれ! 宝物なんだ!』
バナナか。バナナ飛んで行ったのか。
でも何で……という疑問を先読みしていたかのように、汚い字で続きが書いてある。
『猿も木から落ちると言うだろう。だからだな、猫の手を借りたくて――……』
そこまで読んでから、私はビリビリッと音をたててその紙を真っ二つに破った。