まったく。油断も隙もない。
私とお兄ちゃんはミナミに化けさせて、バタバタとその場を退散する。
途中誰かに見られている気がしたのは……絶対気のせいじゃない。
だって「あの耳…どうやって、できてるんだろー」って声が聞こえた。
皮膚とか毛とかで、できてますが。なんて言いそうになる。
そこを堪えて、その声の主に私は「布ですよー」って、耀かんばかりの笑顔を向けた。
猫は、愛想を振りまくのが得意なのだ。
「……とにかく。今日はもう帰って、もっと化ける訓練をしておいた方がいい」
「はい、キトせんせー」
「あと、怪しい人に話しかけられても無視するんだよ」
「はい、キトおかーさん」
「…………あと、ミナミの先生にもお母さんにも、なったつもりないからね」
「……ぐすん。はぁーい、キト」


