通りすがりの子供が、ミナミを指差していく。
「ねー、ウサギさん! ままー、ウサギさんがいるー!」
「え? あら……ホントね、ウサギさんね」
そんな子供たちを不思議そうに見るミナミに、私はコソッと耳打ちした。
――……ウサギの耳、出てる。
「………ひゃあぁぁぁぁっ!」
ミナミの叫び声に、私とお兄ちゃんが不審者みたいな目で見られる。
まあ、多くはお兄ちゃんの方なんだけど。
み、ミナミのバカ……。
「……ウサギちゃん役の練習、熱心にやってるよね~」
「あ? あぁー……うんうん。今度の文化祭でも、この叫び声ならお披露目できそうだ」
どんな劇だろう。と思うような感じになっちゃったけど、皆は「なんだ、台詞か…」というように去っていく。


