ちょっと助けようかと席を立った時、救世主が現れた。
「お前ら、邪魔!」
男にしては、ちょっと高めの声がそう言って牙を剥いた。
ガルルルル……と威嚇するその姿は犬…というか、コイツは犬の獣人。
少し幼さを残す顔だけど、案外しっかりしてる。
まあ、ちょっと素直で従順すぎるところが、私は苦手だけど。
私が苦手なソイツは、犬井ケンという名前で、これまた覚えやすい。
私が犬井を苦手なのを知らないのか、ミナミは犬井を帰りに誘うこともある。
「あ、犬井くん……ありがと………」
ミナミは戸惑ったように犬井を見てから、優しくふわりと笑顔を見せた。
瞬間、犬井の尻尾がブンブンと動いた。
尻尾振ってる……ガッツリ尻尾振ってる……。
「う、うん! よかった、力になれて」
顔を赤くさせてそう言う犬井を見て、ミナミは疑問符を笑顔で浮かべた。


